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サクバット奏者 宮下宣子
vol.8 古楽の歴史とサクバット④
16〜17世紀のスペインとイングランド
スペインでは14世紀から16世紀にかけ独自のポリフォニー楽派が栄えていましたが、マドリードへ王に随行し滞在したフランドル楽派音楽家達「フランドル・カペルラ」のオケゲムやゴンベールら、フランドル楽派の音楽が融合して、更に神秘的宗教曲が作られるようになりました。
ニコラ・ゴンベール
Nicolas Gombert (1495〜1560?)
Magnificato マニフィカート
この頃のスペインはコロンブスを始めとし、大航海時代を迎え本当に世界を股にかける黄金時代を迎えていました。
そして時代を代表するスペイン人宗教音楽家の筆頭はアンダルシア楽派のモラレスです。
クリストバル・デ・モラレス
Cristobal de Morales (1500?〜1553)
Officum Defunctorum & Missa Pro Defunctis
死者のためのミサ曲
盛期ルネサンス音楽-フェリペ2世の治世下(1556-98)同じくアンダルシア楽派のゲレーロは、持てる物全てを貧者に与え、清貧と慈悲に生きた真の聖者としての魂の清冽さが音楽に表れていて、人の心を強く打ちます。
フランシスコ・ゲレーロ
Francisco Guerrero (1528?〜1599)
Defunctis 死者のためのミサ曲
フランシスコ・ゲレーロ
Francisco Guerrero (1528?〜1599)
In Passione positus Iesus 「受難に遭われたイエス」
そして16世紀、世俗音楽でもビリャンシーコというスペイン独自のものが生み出されました。この楽譜はヴェネツィアで印刷され、スウェーデンのウプサラ大学図書館に納められているため「ウプサラ歌曲集」と呼ばれ、ほとんどが作曲者不詳なのですが素晴らしい世俗歌曲集で、よくサクバットアンサンブルでも取り上げられています。
作曲者不詳
Cancioneiro de Uppsala「ウプサラ歌曲集」
Verbum caro factum est「言葉は真実となった」
作曲者不詳
Cancioneiro de Uppsala「ウプサラ歌曲集」
Fa la la la lan 「ファララララン」
スペイン・ルネサンス最大の巨匠と言われるビクトリアは長くローマに住み、ローマ楽派だとされましたが、独自の幅広い旋律の流れにより、宗教的かつ熱っぽい音のドラマを描き出しています。
トマス・ルイス・デ・ビクトリア
Tomas Luis de Victoria (1548?〜1611)
Veni, Sancte Spiritus 聖霊降臨
目を転じイングランドの歴史です。少し時代は前になりますが
ジョン・ダンスタブル
John Dunstable (1390?〜1453)
Quam pulchra es あなたは美しい
ジョン・ダンスタブル
John Dunstable (1390?〜1453)
Beata Mater 祝福されし母
ジョン・ダンスタブルは、中世からルネサンスの移行期に忘れることのできない音楽家です。ダンスダブルは、フランスとイングランド間の百年戦争の休戦時(1347〜1355)にフランスに滞在し、イングランドで作られた和声に三度 六度下の声部を加えるフォーブルドンという手法をフランスに伝え、後のポリフォニーへと発展させました。
イングランドでは1534年ヘンリー8世がローマ教皇庁から離別しイングランド国教会を設立しました。そのためイングランドでは、教会音楽の歌詞が英語で書かれるようになりました。
ウィリアム・バードは、カトリック教徒であると同時に王立礼拝堂楽員であったため、その音楽は国教会のために作曲され、英語による「グレート・サーヴィス」 (Great Service)は、最も優れたイギリス国教会音楽のひとつであるといわれています。しかしバードの声楽曲の最高傑作は、国教会のイギリスにおいても、カトリックの信仰を貫いたバードの信念が感じられるラテン語ミサ曲やモテットだと言われています。器楽曲ではヴァイオル(ヴィオール、ヴィオラ・ダ・ガンバ)による小規模な合奏のためのファンタジアやヴァイオルを伴奏に持つ歌曲が名高く、オルガン曲やヴァージナル曲等の鍵盤音楽も多数残しています。
ウィリアム・バード
William Byrd(1543~1623)
Venite exsultemus Domino
「さあ、主と共に喜びましょう」
ウィリアム・バード
William Byrd(1543~1623)
The Earl of Oxford's
Marche
「 オックスフォード伯爵のマーチ」
また、エリザベス朝に流行したメランコリア(憂鬱)芸術の巨匠でリュート奏者
ジョン・ダウランド
John Dowland(1543? 〜1623)
Flow my tears 「流れよ我が涙」
は、当時の欧州で群を抜いて最も高名な楽曲として、東欧を除く全ヨーロッパで広く演奏され、20世紀にも音楽学研究者・リュート奏者ダイアナ・ポールトンらによる古楽復興運動以来、再ブレイクしています。